夏休み―――。自然の檻に囲まれた町、奥音里。1年前、この町で、彼女の兄はこつ然と姿を消した。月が欠けたような形状をしたこの町は、どこかノスタルジックな雰囲気を漂わせており、様々な伝承や言い伝えがあることでも知られている。過疎化が進む一方で、近年、目抜き通りにはモダンな佇まいの建物も増え、一部のアングラな若者の間ではミステリースポットとも呼ばれ注目され始めてもいる。夏休み前のある日、大学生の主人公<花蒔イチコ>は、幼馴染で大学の同級生<迦具土ヒノ>から、兄の消えた奥音里へ行こうと誘われる。奥音里の謎や伝承を語り合うサイト『奥音里禁忌倶楽部』を見つけたヒノは、そのサイトが夏休みに町で開くオフ会に便乗し、 兄の事を調べようというのだ。ヒノに背中を押されるようにして、イチコは奥音里へ向かう決心をする。ホテル「風厘館」に集まる、「奥音里禁忌倶楽部」の青年たち。住み込みのシェフ<甘梨イソラ>、ネコ好きのオタク<櫛奈雫トア>、医大生の<建比良ソウスケ>そして風厘館オーナーの<叢雲ユヅキ>。その他、ホテルを仕切る天才中学生<比良坂ユキ>、風景カメラマンの<月読カグラ>、不愛想な小説家<烏丸チカゲ>、ゲーム好きの女性従業員<須沙野ユア>を巻き込み、不思議な事件へと誘われていく。次第に明らかになっていくこの町のもう一つの顔と、実しやかに囁かれる「屍者伝説」。消えた兄の足跡を辿るたび、巻き起こる不思議な事件、実在する禁足地、そしてこの町にしか咲かない伝説の花……。事件の真相は、思いもしなかった意外な結末を迎える――。